2025.06.06

新築を建てる際に、補助金は利用したくなるものです。しかし、住宅に限っては実はイイことばかりではない補助金制度。デメリットを理解した上で、補助金を利用して家づくりをするかどうか判断するために参考になるポイントを解説するコラムとなっています。
昨今、新築向けの補助金が多くありますが、多くの方が「もらえるならもらいたい!」と思うことでしょう。
補助金はもちろん、性能のいい住宅の普及の後押しとして活用されるモノですが、実はイイことばかりではありません。
デメリットの側面も考えつつ、冷静に活用するかどうか?を判断する方が賢明です。
今回は、そんな補助金について俯瞰的に考察する内容でお伝えします。
それでは今回のコラムの要点から見ていきましょう。
・補助金は、元々グレードアップする分を「補助」するための制度
・補助金での1つ目のデメリットは、スケジュール上の制約が出てくることで、打合せ等も少し焦ってしまうことにつながりかねない
・2つ目のデメリットは、せっかくの注文住宅でありながら性能値に影響され、間取りや仕様に制約が出てくる可能性があること
・間取りや仕様の制約は計算値としてはプラス方向に働くものの、注文住宅という選択の中で、自分たちが本当にやりたいコト・方向性が補助金で脚かせにならないか?という部分は、冷静に判断して考える方が良い
・補助金は入念に準備しているか、結果的に適合してれば活用をおすすめしますが、後から焦って狙いにいくと失敗しやすい
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1. そもそも新築向けの補助金とは
2025年は、過去にないぐらい新築に関する補助金が充実している年でもあります。
もっともホットな話題は、最大160万円もらえる「子育てグリーン住宅支援事業」で、例年同様のZEH補助金も5月からスタートしています。
いずれも、補助金としてお金がもらえる、ということもあり誰しも「取れるなら取りたい」と思うのが普通です。
しかし、補助金とはそもそもなぜお金がもらえるのか?
それは、下記のような考え方が根底にあります。
① パリ協定など、世界的にCO2削減をすすめる方向
↓ ② 日本において住宅分野のエネルギー消費は増える一方で、対策を取りたい ↓ ③ 高性能な住宅は、エネルギーをあまり使わなくても快適に過ごせる ↓ ④ 断熱性や省エネ性に「特に優れた」家を普及させよう ↓ ⑤ 「特に優れた」高性能住宅の普及率を促進するために補助金で「補助」しよう |
以上のように、まず補助金は「普通の家」ではもらえず、「特に省エネ性に優れた家」がもらえるモノとなっています。
このことから、補助金はまず「グレードアップ分を補助」してくれる、というのが根本的な考え方であることを知っておきましょう。
2. 補助金に潜むデメリットとは
次に、「特に省エネ性に優れた家」にすることはいいことですが、補助金をもらうとするとデメリットも存在することを理解しながらすすめていきましょう。
2-1. スケジュールが限定される
まず1つ目のデメリット(注意点)としては、スケジュール調整が非常にデリケートになります。
補助金制度は、「申請→受理→許可が下りる→工事着工」という順番になっているものもあり、申請のタイミングで着工時期が左右される場合があります。
子育てグリーン住宅支援事業は、昨年の11月以降に請負契約を締結して、工事をしていれば問題ありませんが、ZEH補助金は申請と受理が先で、工事を前倒しではできません。
また補助金の場合、工事が完了した旨を補助金を管轄する機関に提出しますが、この工事完了期間も限定されてきます。
補助金は国の予算を活用して運用されているため、年度内に完了させることが必要なわけですが、家の工事を年度内に必ず完了させなければいけない、という話に繋がっていきます。
ある程度は柔軟な対応をしてくれる印象ですが、それも例えば半年遅れるといった状況になると補助金の取り消しといった事態になることもあります。
このように補助金をとることで、補助金のスケジュールに合わせるぐらいの形になるため、じっくり間取りや仕様を考えよう、という方には不向きな側面があります。
2-2. 「先着順」が焦らせる
補助金制度は、多くが先着順となっています。
注目度の高い補助金は、予算の消化状況がホームページで公表されているため、おおよその予測はつきますが、どうしても補助金が無くなったらどうしよう・・・という気持ちから焦りが出てしまうことも。
近年の傾向を見ていると、ZEH補助金は比較的予算が余ることが多いですが、ZEHの場合はスケジュールが厳しく年度の後半に行けば行くほど補助金活用が難しくなります。
子育てグリーン住宅支援事業は注目度の高さから、予算消化も早いと予想されますので、既に提出ができる方のみが対象になってくるでしょう。
なお、子育てグリーン住宅支援事業は例年の傾向から行くと、お盆明け~秋ぐらいにかけて予算が尽きる可能性が高いですが、これもその年によって違うため注視しておく必要があります。
2-3. 仕様や間取りが限定? / 費用対効果が悪化?
最初に解説した通り、補助金が最大額でもらえる住宅は、「特に省エネ性に優れている家」です。
一律の計算方法で省エネ性を算出しますが、往々にして人気があるキーワードは、省エネ性と逆効果に働くものがあります。
例えばリビングに全面的に床暖房を使うと、かなりの確率でGX志向型住宅への適合は難しくなってきます。
また、リビングに大きな吹き抜けがある、もしくはリビング内階段になると、主たる居室としてのLDKで冷暖房費を多く使う想定になり、不利に働きやすくなります。
ただし、床暖房も吹き抜けも必ずしもダメというわけではありません。
最終的に、一次エネルギー消費量という省エネ性の計算を実施して判断するため、まずは希望のプランで計算してみるとよいでしょう。
富山県はZEH Orientedの適用エリアのため、太陽光発電システムは必須ではないですが、太陽光発電システムが必須になるエリアもあります。
エネルギー使用量を計測するなどの目的で、HEMSの導入が必須ですが、このHEMSも使いこなせば便利ではあるものの、少々設定が難しいことや、コントロールする側の機器もHEMSに対応した商品でないといけないといった事情があります。
※昨今、エアコンやエコキュートなどは普及レベルの商品でもHEMSなどに対応できるようになってきています
このように補助金を獲得するために、グレードの高い設備や断熱材などに変更する費用が発生する場合もあり、このあたりはイニシャルコストと効果のバランスを冷静に考えながら導入を検討することをおすすめします。
3. みなさんが家づくりで大事なことはなにか?
補助金として確かに数十万円~、GX志向型住宅では過去に例のない160万円は魅力的ですが、補助金をもらうために家づくりをしているわけではない、というところを少し冷静に考えてみてもよいでしょう。
補助金には、先ほど紹介したようなデメリットも存在します。
注文住宅には、ご自身の要望や土地の形状などに合わせて、様々なことを選ぶ楽しさがあります。
しかし補助金の制約が頭の片隅にあると、どうしても窓の大きさを小さくする、吹き抜けをなくす、リビング内のオープン階段をやめる、という「建売のような画一的な住宅」に近づく恐れもあります。
YUIでも計算上のテクニックであったり、回避術は持ち合わせているものの、どうしてもコストアップや何かを取りやめる、といった対応に繋がるケースがあります。
さらに建築コストとの費用対効果、という視点も忘れてはいけないポイントで、補助金を取るために必要以上にグレードアップしていないか?見極めが大事です。
プラスになった分が後から補助金で帳消しになるとは言え、総額がアップしてくるため、住宅ローンを組める額に限度がある場合、他に回せる予算が削られたりする可能性もあります。
そのため、「結果的に」補助金に適合してればよいぐらいの感覚で臨む方が、本来の家づくりを見失いにくいのではないでしょうか。
補助金は、いわば高いものに付帯してくるポイントみたいなもので、ポイント狙いで高いモノをわざわざ買うと、結局高い買い物をしていることになりかねません。
4. 今からスタートでは2025年補助金は間に合わない
今この記事をご覧いただいている方で、請負契約などが済んでいない方は、2025年度の補助金を活用するのはほぼ不可能と言っても過言ではありません。
自治体の補助金制度も含めて、年度初めにスタートしますが、スタート時点で間取りや仕様などが確定していて初めて活用できるわけです。
夏頃から住宅会社を比較検討をして秋~冬ぐらいに請負契約を実施、翌年の春頃に仕様が確定するよう準備するとちょうどいいです。
2025年は省エネに関する法改正もあり、家を建てるための申請も非常に混雑しています。
そのため、現時点で家づくりのために住宅会社を比較検討されている方は、来年の補助金狙いでじっくり家づくりをされることがおすすめです。
5. まとめ
YUIでは、補助金制度を活用した家づくりは、もちろん可能となっています。
もらえるならもらいたい!と思うのが普通の感覚でもありますので、補助金を活用したい方はもらえるようご協力やご提案を行なっています。
しかし、だんだん補助金という家づくりの中における、小さな部分にこだわりすぎてしまうと、家を建てる目的や、実現したい暮らしを見失ってはいけません。
YUIでは、打合せに際して家づくりの優先順位や、ご家族がどんな暮らしがしたいか?といった部分を引き出し、お打ち合わせをすすめています。
補助金も1つの大事な要素ですが、捕らわれすぎずに家づくりの本来の目的や、ご家族の意向などを見失わないようにしてください。
家づくりをスタートしたばかりの方向けに参考になる過去の記事もありますので、ぜひ参考にしてください。