1. 室内の暑熱対策で注目すべきは断熱(UA値)だけではない
昨今、ZEHなどで断熱性能(UA値)を高めていくことに住宅業界全体でも注目が集まっています。
しかし、結論からお伝えすると、UA値だけに注目をしていると夏の室内の暑熱対策としては不十分といえます。
むしろ、断熱性能だけを上げてしまうと、夏は冷房費が高くなるというデータもあり、逆効果にすらなりえるでしょう。
その理由をわかりやすくお伝えしていきます。
1-1. 暑熱対策として知っておくべき日射熱取得率
夏の暑熱対策の指標として、建築物省エネ法でも基準になっている「冷房期の平均日射熱取得率ηAC(イータエーシー)値」というものがあります。
ηAC(イータエーシー)値とは、特に夏の時期、家にあたっている日射熱が室内に侵入する比率を表した値です。
この数値は、小さいほど日射遮蔽ができている=日差しを取り入れすぎない設計になっている、という意味になります。
ただし、これも小さすぎると夏は良いものの冬に日射が悪くなり、あまり暖かくない家になってしまうため、設計におけるバランスが大事になってきます。
UA値で示される断熱性能は、あくまで家全体の平均の断熱性で、窓の面積が大きいリビングは、日射による影響がほかの部屋に比べて相対的に大きくなりがちです。
そのため、平均的な断熱性だけを高めても、特に日射による影響が大きい夏は「思ったよりリビングの冷房の効きが悪い」となってしまうリスクも潜んでいます。
1-2. ひさしやルーバーを組み合わせる
夏の遮熱対策だけを考えると、庇(ひさし)やルーバーがあった方がいいのですが、一方で冬の時期は日差しを取り込みたいですよね。
ただ、季節によって伸縮したりするような庇は存在しないため、窓の外部に設置するブラインドやオーニングのようなエクステリア商品で調整することになります。
また、新築を検討する際には、断熱性能を表すUA値や省エネ性を表す一次エネルギー消費量(もしくはBEIなど)といった指標がありますが、外付けの遮熱効果があるルーバーなどの遮熱効果は、数値に現れません。
しかし、現実の生活においては大きな効果をもたらすため、窓ガラスの性能だけでなく、ルーバーやオーニングと言われる「家の外側で日射をカットするモノ」の存在が大事になってきます。
この家の内部に熱が入り込んでくる前にカットするという点がポイントで、窓の内側でカーテンなどを閉めていても、熱は室内に入ってきているため、あくまで窓の外側で日射をカットすることが重要です。
このようなエクステリア商品などと組み合わせることで、より一層夏を快適に過ごせるようになります。
1-3. 窓ガラスの選び方
続いて、窓の選び方にもコツがあります。
YUIでも活用している昨今の高性能な窓の場合、Low-Eと呼ばれる断熱・遮熱効果があるフィルムがガラスに貼られています。
このフィルムの貼り方によって、「日射取得タイプ」と「日射遮蔽タイプ」にわかれます。
「日射取得タイプ」の場合、日差しは積極的に取り込みつつ、室内側の保温性をアップするような仕組みになっています。
このガラスは一般的に、南側に採用されることが多いです。
理由は、特に冬季に南側から日差しをしっかり取り込んで室内を暖かくすることが目的になっています。
一見、夏だけを考えると逆効果なような気がしますが、それは先ほどお伝えした、庇やエクステリア商品で窓の外側で日射をカットすることで、夏だけの日射を防ぐわけです。
窓ガラスは、季節に応じてガラスを入れ替えるわけにはいかないので、庇やルーバーで夏の日差しはカットしながら、冬の日差しだけを取り込むことを推奨しています。
一方で「日射遮蔽タイプ」の場合、熱の流入・流出を防ぐことを目的としており、どちらかといえば日射をカットしやすいような窓になっています。
このガラスは主に直接的に家に入ってくる西日などをカットすることを目的に採用されることが多く、南面以外の方位に設置されることが一般的です。
実際の窓の表面温度も、上記のとおり一般的な複層ガラスに比べて、日射遮蔽型のタイプの場合は5℃以上低い結果が出ています。
このように、方位や家の設計、ひさしなども考えて窓の性能を考えていく必要がありますが、実際には家を建てる皆さんが全部選ぶのは難易度が高いです。
そのため、建築地に合わせて日射なども考えてくれる住宅会社を選ぶことが、みなさんにとって大事なポイントであるといえます。